肝炎と肝臓がん

感染症とがんの関係が明らかになっているものの一つに、肝炎ウイルスの持続性感染による慢性ウイルス性肝炎と肝臓がんがあります。

慢性肝炎の原因になるウイルスはB型肝炎ウイルス(HBV)とC型ウイルス(HCV)の2種類があって、これらのウイルスの持続感染による肝細胞障害が慢性肝炎です。

この慢性肝炎を放置しておくことで、肝硬変に進行し、肝硬変から肝臓がんが発生するとされており、HBVやHCVの持続感染患者さんは肝臓がんの発症を抑えるために抗ウイルス療法をうけることが勧められます。

HBV感染は肝硬変にならずに肝臓がんが出てくることもあるので要注意です。

肝炎ウイルスの抗ウイルス療法

ただし、肝炎ウイルスを持っているからといって、すべての患者さんに抗ウイルス療法を行うのではなく、抗ウイルス療法をうけたほうがよい患者さん、様子をみてもよい患者さんがいます。

また、最近のC型肝炎ウイルスの治療には飲み薬だけで治ってしまう治療法もありますが、合併症によっては治療できない患者さんもいますので詳しくは医師またはクリニックのスタッフにご相談ください。

ウイルス性肝炎について

肝臓は肝細胞において、原料を化学反応により加工する工場のような役割を持っています。
肝臓は予備能力が高く、「沈黙の臓器」と呼ばれています。

肝臓にまつわる疑問をQ&A形式でまとめていますのでご参考ください。

※質問をクリックすると回答が見られます

  • Q1.ウイルス性肝炎とはどういう病気ですか?

    肝炎ウイルスにはA-Eの5種類があります。
    そのうち、D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスと重複感染でのみ
    感染するとされ、日本ではほとんど感染例がありません。
    感染後、慢性肝炎として経過する可能性があるのは
    B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスです。

  • Q2.ウイルスの感染というのはどのようにするのでしょうか?

    B型肝炎、C型肝炎どちらも共通する感染のパターンとして、
    血液を介した感染というのが特徴です。
    感染した人とカミソリの共用や入れ墨などで
    針を共用して使ったことによって感染すると言われています。
    また、B型肝炎は性交渉(セックス)によっても感染してしまうことがあります。
    最近、若年者のB型肝炎の性交渉による感染拡大が問題になっています。

  • Q3.ウイルス性肝炎の患者さんはどれぐらいいるんでしょうか?

    B型肝炎の患者さんが7万人。
    C型肝炎の患者さんが37万人と言われています。
    また、キャリアと呼ばれる肝炎ウイルスに感染していても肝炎(肝機能異常)を発症していないひとも含めると、B型肝炎のキャリア数は推定110万~140万人。
    C型肝炎のキャリア数は推定190万~230万人と言われています。

  • Q4.日本でB型肝炎よりC型肝炎が多い理由は何ですか?

    アジアではB型肝炎が多いなど、世界中の地域によってどちらの肝炎が多いのか分布が異なっており、
    地域性によると考えられます。

  • Q5.ウイルス性肝炎は大きい病気に発展することが多いですか?

    はい。
    放置すると慢性肝炎から肝硬変に進行し、その後に肝臓がんが発生します。
    その肝臓がんをいかに抑えていくかというのが治療の目標になります。

  • Q6.肝臓がんの原因は肝炎が多いのでしょうか?

    肝臓がんの原因はほとんどがウイルス性肝炎です。
    B型肝炎が15%、C型肝炎が70%ぐらいと言われています。
    ウイルス性慢性肝炎を治療せずに放っておくと、肝臓が炎症のせいで線維化を来して肝硬変に至ります。

    C型肝炎では肝硬変から肝臓がんが発生することがほとんどですが、
    B型肝炎は肝硬変に至らない慢性肝炎の状態から大きな肝臓がんが発生することもあり注意が必要です。

  • Q7.肝炎の治療はどのように行われるのでしょうか?

    以前はウイルス性肝炎に対する治療法として、
    インターフェロンと肝庇護剤や漢方薬などで治療していましたが、
    治療効果は不十分でウイルス排除にはなかなか至らなかったのですが、
    最近ではB型肝炎ウイルスに対しては核酸アナログと呼ばれるウイルス遺伝子の増幅阻害剤
    C型肝炎ウイルスに対してはウイルス蛋白のうち、ウイルス遺伝子の増幅に関与する蛋白の阻害剤の組み合わせで治療するようになりました。
    いずれも内服薬であり、飲み薬のみで治療できるようになりました。

  • Q8.肝炎は完治する病気でしょうか?

    B型肝炎ウイルスに感染するとウイルス遺伝子は肝臓内に長期間、
    残留するとされており、抗ウイルス剤はウイルスを排除することはできず、
    ウイルスの増殖を抑えているだけです。
    このため、治療薬を中止するとウイルスが再増殖して肝炎が再燃するため、
    長期間、薬剤を内服し続ける必要があります。

    C型肝炎ウイルスの治療薬は現在では95%以上の確率で肝炎ウイルスを排除することができるとされており、インターフェロンによる治療を行っていたときよりも格段に治療が進歩しました。

  • Q9.肝臓にはどういう働きがありますか?

    肝臓の役割は合成、貯蔵、解毒の3つの機能を持っています。
    主な働きはタンパク質の合成で
    その他にも、グリコーゲンやエネルギーを貯蔵したり、薬を代謝して排泄する機能も担っています。

  • Q10.肝臓の病気にならないために普段の生活で気を付けておいた方がいいことはありますか?

    肝臓については、飲酒の影響は大きいと考えられます。
    過度の飲酒により肝機能が悪化するので、飲みすぎには注意が必要です。
    脂肪肝の原因には食べ過ぎもあり、食べ過ぎにも注意が必要です→Q11参照

    B型肝炎については、感染している人とカミソリや歯ブラシの共用することで
    感染するリスクがあるため、洗面用具の共用は避けましょう。
    また、性交渉感染の可能性を考えると、コンドームの使用などで感染を予防できます。

  • Q11.脂肪肝はどのような症状でしょうか?

    脂肪肝というのは肝臓に脂肪が沈着した状態のことです。
    原因としてアルコール(過度の飲酒)や栄養過多(過食)などが挙げられます。
    食べ過ぎ、飲み過ぎは避けましょう。

    脂肪肝に特有の症状はありません。
    診断には肝生検(肝臓の組織を採取して病理検査を行うこと)が必要ですが、
    腹部超音波検査や腹部CTなどの画像検査でも肝臓に脂肪が沈着していることを推測することが可能です。

    また、かつては脂肪肝を放置していても問題ないと考えられていましたが、
    最近では脂肪肝の患者さんのうち10%ぐらいの方で進行して肝硬変になる場合があると言われています。
    脂肪肝と言われても放置せず、定期的な診察や画像検査を受けるようにすることをおすすめします。

  • Q12.肝臓に異常が起きた時は気付けるものですか?

    急性肝炎の場合、黄疸、倦怠感、褐色尿(尿の色が濃くなる)などの
    症状で異常に気づくこともあり、これらの症状を契機に医療機関を受診し採血で肝機能異常が見つかることが多いと思います。

    慢性肝炎の場合は、原因が何であれ、軽度の肝障害程度であれば症状はほとんどないため、自覚症状で気づくことは難しく、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる所以です。

    多くの場合、健康診断や、他の理由で医療機関を受診した際に
    採血で肝機能異常を指摘されて、ウイルス検査など詳しい検査を行って初めて診断がつきます。

    慢性肝炎が進行すると最終的に肝硬変に至りますが、肝硬変になると、
    腹水、浮腫、こむらがえりなどの症状が出ますが、ここまで気づかれずに経過することは最近では稀と思います。

    札幌市が実施している特定健診や会社の定期検診でも肝機能検査は含まれています。
    健康診断などで肝障害を指摘された場合は、放置せずに医療機関を受診し、きちんと治療すべきかどうかを相談することが重要です。